春の息吹があふれる頃。
小さな演奏会を開きます。
昨年の秋にブオリに音と踊りを届けてくれた、
ふたりの
小さな旅は静かに続いて
春へ。
ふたりと出逢ったのは去年のちょうど今頃。
菅間さんは山を歩く人。
はじめてブオリに来た時、珈琲を頼み
本棚の前でじーっと山の本を静かに選び、
読んでくれたあと
自己紹介をしてくれた姿が印象的だったのを覚えています。
ぺらぺらと上手に喋るのではなく、ひとつひとつ自分の中から言葉を丁寧にえらび、
音楽をやっていること、山を歩くことや山の本が好きなことを、話してくれました。
一緒に活動されている唯さんは笑顔がほんとうに素敵で、
異性なら恋をしてしまいそうな
本と珈琲が好きな女性。
その後も
ふらりと来てくれるふたりと、
珈琲を飲みながら山のことや、好きな山の本の話しをするのが密かなわたしの楽しみでした。
そして、秋に聞いた
ふたりの生の音と空気。
それは今思い返しても、じわっと温かい火が心に灯るような時間でした。
つまびかれた弦の音は
彼の思いからたちのぼり、先へと広がっていく。
わたしは山でみた光や水の雫、風、湿り気を帯びた空気を思い出す。
彼女の
指先や、手、足、から見えたのは、土の中にある
いのちの流れや、水や風の流れ、
草花の気配、空気のような。
きっと見る人によって目の前にみえる景色は
違うけれど。
言葉で伝えられることは、ほんのわずか。
いつも珈琲を飲みながら話していたふたりとは
同じなんだけれどもっと奥の
彼らが紡ぎ、大切にしてきな何かを
音と踊りから聞いたような。
言葉以上に伝わってくるもの。
東北の土地をめぐり、旅してきたふたりを温かな灯りをともして、
春の夜に待ちたいと思います。